「学校検診結果のお知らせ」を持って帰ってきた!これはどういう意味?
2023年06月12日
5月下旬から6月にかけて、学校歯科検診の時期です。
「学校の歯科検診のお知らせの紙をもらってきました。この項目に〇がついているのですけれど・・・どういうことですか?」とよくご質問をいただきます。
歯科検診の結果がどういうことなのか?ということについて今回はお話したいと思います。
西宮市の場合、主に7つの項目に分かれています(2023年度)
1 う歯( 乳歯 永久歯 )
2 要注意乳歯
3 歯肉の炎症
4 歯垢の付着
5 歯列(歯並び)・咬合(かみ合わせ)
6 顎関節部の異常
7 その他〔 〕
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目次
う歯について
う歯とは虫歯のことです。
痛くないみたいだし、歯医者さん連れて行くのも大変だし、急がなくてもいいよね。と思われるかもしれませんが、乳歯はかなり大きな虫歯でも痛いと言わないことが多いです。
乳歯は虫歯の進行も早いので、なるべく早めの受診をお勧めします。
永久歯に〇がついている場合も、生えたばかりでの永久歯なので歯としては弱いです。虫歯の進行も早いです。※特に低学年の場合
ずっと使う大人の歯ですから、適切な治療をしましょう。
※歯医者さんが初めてというお子さんの場合、必ず初日に虫歯治療ができるとは限りません。
特に低年齢のお子さんはできないことが多いです。
まずは歯医者さんに慣れてからということになります。
虫歯治療に対してネガティブなイメージがあるお子さんほど、治療に対して協力が得られません。「歯磨きしないと、歯医者さんで歯を削ってもらうことになるよ!」「歯医者さんで治療するのは大変だよ!痛いよ!だから、ちゃんと歯磨きしよう」といった歯磨きをする際の何気ない一言がネガティブイメージを作ります。ポジティブな声掛けをお願いします。
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要注意乳歯
要注意乳歯とは、もうじき抜けて永久歯と交換しそうなグラグラしている乳歯で、注意が必要な乳歯のことです。
要注意乳歯を「乳歯が虫歯になりそうだから注意しなくてはいけない歯」と勘違いされている方もいますね。
グラグラの乳歯ならいずれ抜けるし、歯医者さんに行かなくてもいいかな?と思われるかもしれませんが、以下のことで要注意とされているので、一度歯医者さんに診てもらう方がいいでしょう。
1.下の永久歯が生えてきているのに、まだ乳歯が抜けずに残っている
→磨きにくく、虫歯になったり、歯茎が腫れたりしやすい
2.乳歯が抜けないため、永久歯が本来の位置ではない場所に生えそうになっている
→乳歯が邪魔して、永久歯が変な位置に生えるため、歯並びに影響する
3.乳歯がグラグラしてもうじき抜けそうだけど、なかなか抜けない
→咬むと痛いため、よく食べることができない。乳歯の根が出てきている場合は、腫れたりしやすい
要注意乳歯の場合、処置としては抜歯になることが多いです。抜歯となった場合は、麻酔を使用します。麻酔は2-3時間しびれていますので、その間お食事を避けてもらいます。※間違って口の中や唇をかまないようにするため。
夕方の受診の場合、麻酔が切れるまで待つと、食事時間が遅くなります。お子さんが処置後お腹がすいて食事を我慢できないと予想されるときには、事前に軽食を済ませるなどの工夫をお願いします。
学校検診から、歯科受診までの期間が開いている場合、歯科の受診をしたときにはもう対象の乳歯が抜けているということもあります。
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歯肉の炎症
前歯の歯茎の腫れで診断されます。
ちょっとだけ歯茎が腫れているのであれば経過観察になり、検診結果のお知らせ対象にはなりません。
歯科医師による検査や診断・治療が必要な歯周疾患の認められる者、歯石がついている、広範囲に腫れている、相当な歯茎の腫れがあるときに引っかかります。
歯石がつくとご自身では取ることができませんので、歯医者さんの受診が必要です。
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歯垢の付着
前歯の歯垢(プラーク)の付着状態で診断されます。
歯の1/3を超えるような状態の歯垢で引っかかります。
これは、歯磨きができていませんよということですので、歯科医院で適切な歯磨きの方法を教えてもらいましょう。緊急性はありませんが、今後の歯の健康を維持するために歯磨きの方法を知ることはとても大切です。
こちらの項目は、先日歯医者さんに行ったのにどうして?検診にひっかかるの?ということがしばしば起こります。歯垢は食後4~8時間で形成されますので、検診前日、当日に歯磨きできていなければ、ひっかかるのです。
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歯列(歯並び)・咬合(かみ合わせ)
この項目は、以下の基準で咬合の判定をしています。
・下顎前突:前歯で2本以上反対に咬んでいる
・上顎前突:横からみたときの上の前歯の切縁と下の前歯の切縁の水平的距離の差が7~8㎜以上ある(いわゆる出っ歯)
・叢生:歯がガタガタになって並んでいるもので、隣の歯と1/4以上重なりあっている
・正中離開:上顎の真ん中の歯がすきっぱで、6mm以上隙間のある
・開咬:奥歯で咬んでも前歯が咬まない状態で、上下の前歯の間が6㎜以上空いている
※歯が生えている途中で前歯が咬まない場合は対象外
その他:これらのかみ合わせ以外の状態で、特に注意すべき咬み合わせがある場合もお知らせがきます。過蓋咬合(かみ合わせが深い、下の前歯が上の前歯に隠れて見えない)、交叉咬合(上下のかみ合わせが、一部反対の状態で咬んでいる)、鋏状咬合(上の歯が外側にでているため、下の歯とすれ違ってしまっている)などです。
※厚生労働省e-ヘルスネット 不正咬合の種類と実態
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-06-001.html
歯列・かみ合わせの項目に〇がつくと、必ず矯正治療をしなくてはならないという意味だととらえ、悩まれる保護者の方がいらっしゃいます。学校検診では、矯正治療の必要性を判断しているのではありません。歯列、咬合が将来的にお口の健康や全身の健康にとって、どのようなリスクが考えられるかを認識してもらうことにあります。
まずは歯医者さんで相談して、その上で矯正するかどうかをご判断ください。
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顎関節部の異常
顎に痛みがある、著しくお口を開けることができないという場合、お口を開けるときに明らかに顎が曲がっているなどのときにお知らせが来ます。
将来的に顎関節症に発展する可能性があるので、歯医者さんに相談しましょうという状態です。時々お口が開けにくいという程度では経過観察となります。
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その他
癒合歯(本来、1本ずつ生えてくるはずの歯が、2本くっついて生えてしまっている歯)、過剰歯(通常の歯の数よりも多い)などが記載されます。
他、気になる特記事項が記載されることもあります。
要観察歯について
要観察歯というのは、見た目に明らかに穴は開いていないけれど、初期虫歯の兆候があり、そのまま放置すると虫歯に進行しそうなので、経過を注意深くみていく必要がありますよという状態の歯のことです。COと表記されたりします。
心配な状態なので、歯医者さんに相談した方がいいですよという場合には検診のお知らせが来ます。
虫歯に進行する可能性もありますので、早めに歯医者さんで相談してくださいね。
学校での検診結果と歯医者さんの診断が違うのはどうして?
「学校検診で虫歯って言われたのに、歯医者さんに行ったら、虫歯はないって言われた」というご経験があるかもしれません。
検診結果のお知らせにも記載がありますが、「学校・園での検診は、病気の疑いのある子どもを見つけることが目的であり、必ずしも病気であるとは限らないことをご理解ください。」とあるように、学校検診はスクリーニングすることを目的としていますので、確定診断ではありません。しっかり歯医者さんに診てもらうためにお知らせが来ます。
また「歯医者さんでは虫歯がないって言われたばかりなのに、検診結果は虫歯ありになっていた!」「学校検診では虫歯がないって言われたばかりなのに、歯医者さんでは虫歯があると言われた」ということもあります。
歯医者さんがみてくれるのだから、学校と歯科医院の検診は同じではないかと思われている方も多いのですが、精度が違います。
学校検診は、見た目だけでの判断となります。照明が歯科医院に比較して暗く、歯をよく見るため乾燥させたりもできず、レントゲンでの検査もできません。限られた時間で多くの人数を診るという時間の制約もあります。また、お子さん自身の歯磨きが不十分だと、磨き残しで歯がよく見えません。
大きな虫歯や歯肉炎、要注意乳歯などは大きく診断の差がでにくいと考えられますが、学校検診では歯科医院で受ける診査の精度はありません。レントゲンを撮影しないと、歯と歯の間の虫歯の診断が正確にはできないことも多くあります。
そのため、学校検診で虫歯無し=虫歯は絶対にないよということにもなりません。
とはいえ、学校検診はある程度の目安にはなります。
あくまでも私見になりますが、学校歯科検診は、年に1回、見た目だけの診断だとしても、ある程度チェックすることで早期治療が可能になること、進んだ虫歯をこれ以上ひどくしないように治療を受けるきっかけとしては大切だと考えています。定期的に歯医者さんを受診するという方は、まだまだ少ないので。
また、検診があることで、子供が自分自身の歯に対して興味、関心が出ることはとても大切なことだと思います。
学校検診はあくまできっかけとして、日頃から歯を大切にしましょう。
経過観察が必要な歯がある場合は特に気を付けてください。
学校検診は大丈夫だったけど、ちょっと心配なことがあるという場合も気軽に当院へご相談ください。
参考資料
学校歯科 歯・口腔健康診断マニュアル(平成27年度改訂)兵庫県歯科医師会 兵庫県教育委員会