金属アレルギーとは?

2023年07月27日

金属アレルギーは、生まれつきではなく、後天的に起こるものです。

金属に触ったことがあるというだけでアレルギーになるのではなく、金属が汗や唾液に触れ、イオン化して体内に入り、体内のタンパク質と結合して「金属タンパク複合体」となることにより、「異物」として免疫細胞に記憶されます。※諸説あり

これを感作と言います。

感作された物質が再び体内に入ってくると過剰に免疫細胞が反応し、アレルギー反応を引き起こします。これを誘発と言います。

一般的にはピアス、ネックレスなどのアクセサリーや生活用品の金属が原因と考えられていますが、歯科で使用している金属でもアレルギー症状を引き起こす可能性があります。

金属アレルギーの種類

金属アレルギーは大きく2つの種類があります。

金属に直接接触することによる金属接触アレルギーと全身型の金属アレルギーです。

金属が触れている金属アレルギー 西宮北口 歯医者部分が炎症を起こす金属接触アレルギーは、ピアス、ネックレスなどが、長時間、汗をかいた肌に触れていると起こりやすく、金属アレルギーの原因の多くを占めています。夏は汗をかきやすいため、皮膚表面で金属がイオン化しやすくなるので、金属アレルギーを発症する人が多くなります。

口腔内では、歯に金属が入っている口の粘膜が荒れたり、扁平苔癬という粘膜の病変ができたりします。

全身型は歯科で使用している金属、食品や内服薬に含まれる金属が口の中の粘膜や消化器から体に入ることで発症し、全身に起こる金属アレルギーです。金属が直接触れていなくても皮膚炎が起こります。

症状としては、膿がたまった膿疱と呼ばれる皮疹が手のひらや足の裏にできる「掌蹠膿疱症」や手や足の指、手のひら、足の裏に小さな水ぶくれが多発し、かゆみや痛みを伴う「汗疱状湿疹」などがあります。

金属アレルギーになりやすい金属は

ニッケル、クロム、コバルト、パラジウム、スズ、アマルガム、銅がアレルギーになりやすいと言われています。ニッケルは、50円、100円、500円硬貨、メガネに使用されている形状記憶合金などにも使用されており、身近な金属です。

金、プラチナ、銀はアレルギーが起こりにくいと言われていますが、アレルギーを絶対に起こさないということはなく、まれに、金、プラチナ、銀に対してもアレルギーを起こす方もいます。

シルバーアクセサリーはかぶれるということを聞いたことがあるかもしれません。銀自体はアレルギーにならないのですが、銀純度100%のシルバー1000では柔らかいため、丈夫にするため金属を混ぜます。シルバー925は92.5%純度の銀で、残り7.5%が他の金属です。残り7.5%に含まれる金属に対してアレルギー反応が出る場合があるのです。

身近な金属

金属は様々なものに含まれています。

アクセサリーや時計などはすぐに思い浮かびますが、金属は食物にも含まれており、ナッツ、コーヒーとチョコレートにも金属成分は含まれています。金属、体に悪そうと思われるかもしれませんが、人間にとって、必要な栄養素の一つです。「鉄」と言えばイメージがわきやすいでしょうか。鉄分不足で貧血とよく聞きませんか?金属成分は自らの体内では作りだすことができないので、食事などで補う必要があります。

タトゥー、アートメイク、カラーコンタクトにも金属成分は入っています。

体内で使用されている金属は、骨を固定するボルトや、心臓のペースメーカー、人工内耳など様々な種類があります。

他に、皮ベルトは加工の工程でクロムを使用していることがあります。

日常いたるところで金属に触れる機会はあるのです。

歯科治療で使用される金属

インレー 西宮北口 歯医者歯医者さんで銀歯になりますと言われたら、保険診療で使用できる金銀パラジウム合金のことを指すことが多いです。メーカーにもよりますが、金12%、パラジウム20%、銀46~49.5%、その他2%で構成される金属です。その他2%には、亜鉛、イリジウム、インジウム、ガリウムと言った金属が含まれます。

他に金属を使用するものとしては、入れ歯に使用されるコバルトクロム合金がありますが、こちらは、コバルト、クロム、モリブデンが主に含まれ、鉄、ケイ素、マンガン、アルミニウムなどが微量に含まれています。

インプラントにはチタンやジルコニウム合金が使用されています。チタンは人工関節や固定に使用される金属です。チタンはアレルギーが起きにくい金属ですので、体内に入れるものにも使用されています。

このように、歯科では、様々な種類の金属が使用されています。

歯科金属アレルギーと関連疾患

歯科金属アレルギーが関係していると考えられている疾患としては、掌蹠膿疱症、湿疹、扁平苔癬、尋常性乾癬、皮膚炎があげられます。

金属の接触部位に必ずしも症状が出るわけではなく、手、足などに症状がでる全身的症状が出ることも多くなっています。

また、歯科で使用している金属に対してアレルギーある場合でも、必ず、アレルギー反応が全身に出るということではありません。また、必ず歯科金属だけが原因で発症しているとは限りません。歯科処置を行って、アレルギー症状が発症したという、ある程度の関係がみられる場合に、お口の中の歯科金属との関連を疑います。

歯科金属アレルギーに対しての治療の流れ

初診時には、問診・視診・レントゲン検査などを行います。

金属にかぶれたことがあるか、タトゥー、アートメイク、カラーコンタクト、インプラント、骨を固定するボルト、心臓ペースメーカー、人工内耳の器具などの有無も確認します。

皮膚科でパッチテストを受けます。

パッチテストは、3日間入浴ができない、汗をかく激しい運動は禁止となることから、夏は避けて、気候の良いときに受診されるとよいと思います。

金属成分分析

お口の中の金属に確かにアレルギーがあるか金属の成分を調べます。

お口の中の金属のサンプリングをして、成分分析をします。

設備がある大学附属病院などで行われます。

クリニックでは、この金属にはこの成分が入っているという一般的な成分構成で代用します。

金属のかぶせ物、詰め物の除去

お口の中の金属にアレルギーがある場合は、除去の際、一時的にアレルギー症状が悪化する場合があります。お口の中の金属を除去してから、訴えていた症状が緩和されている場合は、最終的にかぶせ物などをやり直します。

※パッチテスト陽性で、根の先に膿があるなどの歯性病巣、歯周病などの慢性炎症がある場合は、先に口の中の慢性炎症を取り除く治療をしてから、金属除去治療をします。掌蹠膿疱症では、扁桃腺炎や歯性病巣などの慢性疾患の関与が疑われる患者の割合が高いとされ、金属が関与する患者の割合は低いともいわれています。

経過観察

症状が消えてくるかを確認します。

すぐに症状の改善が見られない場合は、半年から1年、仮歯の状態で様子を見ます。

2か月で50%以上の患者様に改善傾向がなく、2年後で約60%の患者様に改善傾向が出てきたという報告があります。

このことから、金属のかぶせ物、詰め物を外したからと言って、必ず症状が治るとは限らないことがわかります。

最終補綴(かぶせ物等のやり替え)

症状の改善が見られた場合は、仮歯にしていたところを最終的なかぶせ物にやり替えをします。歯科金属アレルギーの関連した皮膚疾患は、寛解と増悪を繰り返すことが多いため、長期にわたる経過観察が必要になります。

昔は、金属を使用しない治療は自費診療になることが多かったのですが、最近は保険適応で金属以外のかぶせ物であるCAD/CAM冠やアレルギーになりにくいチタンのかぶせ物もできるようになりました。一番奥歯は金属アレルギーの人だけが保険適応でCAD/CAM冠を入れることができます。

CAD/CAM冠保険適用条件 西宮北口 歯医者ただし、金属アレルギーの自己申告では保険適応はされません。昔ピアスでかぶれたことがあるという自己申告だけでは無理なのです。保険適応で治療しようとする場合には、医科の保険医療機関の金属アレルギーの診断が必要となります。医療機関で診断をしてもらい、歯科宛てに診療情報提供書といわれる紹介状を書いてもらって初めて保険適応されるのです。

ここで、もう一つ注意していただきたいのは、CAD/CAM冠は単独で、一つの歯にかぶせるときに使用されるもので、ブリッジという、歯のないところを補うかぶせ物では保険適応が限られます。(2023年現在、犬歯を含むブリッジ、臼歯2歯欠損には保険適応されません)

今後、金属並みに強くてしなやかな新しい材料ができるといいですね。

 

金属アレルギーだと思うという方は、ご自身で判断せず、一度医療機関でパッチテストを受けてみてください。

医療機関で調べたら、金属アレルギーではないことが判明したという方もいます。逆に、調べたらご自身で思ったよりも多くの金属に対してアレルギーが判明したという方もいます。

まずはしっかりと調べてもらいましょう。

※参考ページ 日本歯科医師会 テーマパーク8020

https://www.jda.or.jp/park/relation/metalallergy.html