お正月、おいしいものを食べすぎてしまった!肥満と歯の関係は?
2024年01月05日
年末年始はおいしいものを食べる機会が増えます。
クリスマスに始まり、年末、年始あまり動かない割に食べてしまった。
久しぶりに会う方と会食などもあるかもしれません。
つい、食べ過ぎてしまい、ちょっと服がきつくなったな・・・となりませんか。
これが肥満というレベルになると、歯周病にも悪影響を及ぼします。
肥満と歯周病
1998年に、福岡市健康づくりセンターにおける健診結果より、肥満が歯周病と関連していることが初めて報告されました。
歯周病のリスクは、BMI が20未満の者を1とすると、BMI が20から24.9の者では1.7倍、BMI が25から29.9の者では3.4倍、BMI が30以上の者では8.6倍と肥満によりリスクが上がっています。
※参考サイト 8020財団 歯周病と 生活習慣病の関係(2017)
https://www.8020zaidan.or.jp/pdf/jigyo/sisyuu.pdf
肥満は歯周病に影響しています
肥満の原因となる脂肪細胞で作り出される「TNF-α」というサイトカインは、歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かして歯周病を進行させます。
脂肪細胞の数がは成人で約300億個、肥満者で400臆から600億個と言われています。
肥満者の場合、脂肪細胞の数も多くなるため、サイトカインの分泌も多くなり、歯槽骨を溶かして歯周病を進行させるのではないかと考えられています。
このTNF-αはインスリンの働きを下げるため、糖尿病にもかかわるとされています。
他にも、岡山大学のラットを使った研究となりますが、肥満になると、歯周病が進むことがわかりました。
肥満になるとみられる特有のmRNAが、歯周組織にかかわる遺伝子へ影響を及ぼし、影響を受けた一部の遺伝子が歯槽骨の吸収に関連していることがわかりました。
※参考サイト 岡山大学肥満と歯周病の関連性について動物実験で解明(2022)
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20220422-2.pdf
肥満と早食い
人間ドックの問診表で、このような項目をみたことはありませんか?
「人と比較して食べる速度が速いですか」
この項目は、食べる速さが速いと肥満になりやすいことがわかっているため、その確認項目になります。
小さい頃、よく噛んで食べるように言われたことはありませんか。
また、30回噛むことでダイエットなどもきいたことはありませんか。
よく噛むことで、脳に刺激が伝わり、食べたエネルギーの量にかかわらず、脳の満腹中枢が食事終了と感じるようになります。
また、噛むことで活発になった神経系を「脳内ヒスタミン神経系」といいますが、食欲抑制や脂肪分解、熱産生・放散をそれぞれ亢進させるため、内臓脂肪を燃やす効果があると言われています。
よく噛むことは、肥満症診療ガイドラインでは「咀嚼法」と位置づけられています。
咀嚼法とは1度口に運んだものを30回噛んでから飲み込むもので、できたら〇をつける、29回や31回で飲み込んでしまっても×を付ける。
30回以外で飲み込んだら×と記録をつけて習慣づけるものです。
実際やってみると、かなり大変です。
個人的感想ですが、ジャスト30回が難しいのです。
まず、数えるのに気が取られて、あまり食べている感じがしません。
話かけられると、数え間違いそうになります。
習慣づくまでが大変です。
同じように一口30回噛む習慣を勧める「噛ミング30(カミングサンマル)」ご存じですか。
咀嚼法のように記録を付けることは必要ありませんので、こちらの方が取り組みやすいかもしれません。一口30回以上噛むことを目標にしています。
これは、簡単に噛める柔らかい食べ物ばかりでなく、ある程度噛む回数の必要な食べ物をしっかり摂取しましょうという趣旨のもとに行われています。
他にも、「咀嚼支援マニュアル」といってさらに取り組みやすいものもあります。
ゆっくりよく噛むことを食べることを目標にしているものです。
※参考サイト 咀嚼支援マニュアル 受信者用
https://www.niph.go.jp/soshiki/koku/kk/sosyaku/manual/manual.pdf
早食いをやめるために
・噛む回数の目標をたててみる(例:30回)
・一口の量は少なめにして、形が無くなったら飲み込む
・先の食べ物を飲み込んでから次のものを口に入れる
・口に食べ物が入っているうちは、水分をとらない
・一口ごとに箸、スプーンなどを置く
・ながら食べをしない(テレビ、スマホなど見ながら食べない)
・家族、友人と一緒にゆっくり20分くらい時間をかけて食事をする
取り組めそうなところからはじめてみてください。
※参考サイト 厚生労働省 e-ヘルスネット 速食いと肥満の関係
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html
※正確にはスピード早く食べる「速食い」が正しい表記だそうです
肥満だと歯が少なくなる?
滋賀医科大学とサンスター株式会社の共同研究で、定期健康診断結果と医療機関の診療情報をもとに、年代ごとのBMIと歯の本数の関係を分析するとともに、肥満者と非肥満者でなくなる歯の部位の比較を行った研究が2022年9月に発表されました。
40代以上でBMIが高いほど歯の本数が少ないこと、肥満者では非肥満者に比べて奥歯から歯を喪失していくことがわかりました。(下図はサンスターHPより引用)
肥満が、歯の喪失のリスクとなることが明らかになりました。
早めに歯医者さんを受診して、適切な治療を受けることは歯の喪失を防ぐことにつながります。
人間ドック、会社の検診でBMIが高いと言われた方、一度歯医者さんも受診してみてはいかがでしょうか。
※参考サイト サンスター
肥満度が高いと歯の喪失リスクにビッグデータ解析により中高年の歯の残存に大きな差があると判明
https://www.sunstar.com/jp/newsroom/news/20220926/
歯の本数が少ないと噛めなくなる
年齢が上がるとともに、20本以上の歯を持つ人の割合が減少していきます。
8020運動といって、80歳で20本の歯を残そうという運動がありますが、2007年には25%を達成、その後2017年の歯科疾患実態調査(2016年調査)では達成者が51.2%となりました。
また、年齢が上がるとともに、「何でもかんで食べることができる人」の割合は減少します。
70歳代では3分の2強、80歳以上では半数強しかいません。
歯が無くなると、噛めるものが限られてきます。
特に、硬いものは避けるようになるため、ミネラル、ビタミン、食物繊維などの摂取量が少なくなり、栄養バランスが崩れてしまうことがわかっています。
もし、歯が無くなってしまってよく噛むことができない場合は、噛むことができる入れ歯などを入れることで、歯が20本あるのと同程度の効果が得られます。
ご自身の歯を1本でも多く残すため、健康長寿を伸ばすためにも、定期的にかかりつけの歯科医院でみてもらいましょう。