歯医者さんの麻酔について
2024年04月19日
歯医者さんの麻酔、ドキドキしますよね
次回麻酔を使いますと言われただけで、嫌な気持ちになる・・・
歯が痛んでいるとき、歯を抜くとき、虫歯が深く神経にまで達しているときの処置は、麻酔なしではできません。
麻酔が無ければ、痛くてできない処置もすることができるようになりますので、麻酔の恩恵は大きいのですが・・・
麻酔もイヤだけれど、治療しているときの痛みもイヤなので、仕方なく受け入れるという感じでしょうか。
今回は歯科で使う麻酔について解説します。
歯科麻酔の種類
歯科の麻酔には塗る麻酔と注射の麻酔があります。
塗るタイプの麻酔は「表面麻酔」として使用します。
注射に使用する針は、昔に比べてとても細いので、痛みはだいぶ少なくなりました。
とはいえ、痛いのはなるべく避けたい。
そこで、注射のチクッっとする痛みを和らげるために表面麻酔を使用します。
表面麻酔を使用することで、痛みを和らげることができます。
注射の麻酔といえば、よく治療する部位の周囲に注射するイメージがありますが、その麻酔は「浸潤麻酔」といいます。
他にも、神経の根元近くに麻酔薬を入れる「伝達麻酔」といわれる方法もあります。
通常の麻酔が聞きにくい部位の治療や抜歯の際に使用します。
2~3時間長く広範囲に効く麻酔です。
麻酔が効かなかったらどうしよう
“自分は麻酔が効きにくいタイプです”という方がいらっしゃいます。
麻酔は、歯ぐきに注射をされることが多いと思います。
歯は顎の骨に埋まっているので、麻酔薬が歯の神経に届くためには、まずは骨の中に浸透していく必要があります。
骨が緻密にできているしっかりした骨の人は浸透しにくいため、麻酔が効きにくく、骨があまり緻密でない骨の方は麻酔が効きやすい傾向にあります。
そのため、麻酔が効きやすい、効きにくいという個人差が出てくるのです。
また、下の奥歯の周囲は緻密な骨が厚く、上顎の骨は緻密な部分は薄く海綿骨といわれる空洞がある骨が多くの割合を占めますので、上の歯は麻酔が効くけれど、下顎の治療では麻酔が効きにくいということも起こります。
骨が緻密にできている方には、「浸潤麻酔」が効きにくいため、「伝達麻酔」を使うこともあります。
歯が痛くなってから歯医者にくる人は多いのですが、かなり痛い状態の歯も麻酔が効きにくくなります。炎症が起きている歯の周りの組織は酸性になっているのですが、麻酔薬は酸性の環境では効きにくいのです。
このように、麻酔が効きにくいという状況はありますが、麻酔の効果が得られない場合は、場所や方法を変えて再度麻酔をしていきます。
“私は、お酒に強いから麻酔が効かない”と心配される方もいますが、お酒に強いから麻酔が効かないということはありません。
麻酔の効果は、神経に到達しやすいかどうか、周囲の炎症の状態で決まります。
麻酔が効いているかどうかは処置の前、最中に確認しますので、ご安心下さい。
麻酔が効いていないときは遠慮せずにお知らせください。
麻酔の痛みが苦手という方へ
前述したように、麻酔の針は昔に比べて細くなりましたので、痛みは昔ほどありません。
針の細さはを示すゲージGは、数字が上がるほど細い針になるのですが、医科で使用される針の採血は21G~23G、コロナワクチンの際は25G、インフルエンザワクチンは26Gや27Gがよく使用されているようです。
歯科は27G~33Gがよく使用されています。
かなり細い針を使用しています。
さらに表面麻酔をすることで、針のチクっとした感じはだいぶ緩和されます。
とはいえ、圧迫する感じはあります。
圧迫による違和感を軽減するために、電動注射器も使用します。
当院では、表面麻酔、電動注射器を使用して、極力麻酔の痛みを軽減するよう努めています。
警戒すると緊張してしまいますが、緊張すると痛みに敏感になることが知られています。
緊張すると刺激に対して敏感になるからです。
緊張を和らげることが痛みを和らげることにつながります。
麻酔を使った治療を予定しているときは、少しでもリラックスできるように、できれば体を締め付けない楽な服装でお越しください。
麻酔で気分が悪くなる方へ
麻酔で気分が悪くなると、麻酔薬が体に合わないからだ、麻酔薬アレルギー(アナフィラキシーショック)だと思っている方もいらっしゃるのですが、多くの原因は麻酔に対する恐怖心から起こります。
不安や恐怖が原因で、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、副交感神経である迷走神経が緊張状態になり、血圧と心拍数が極端に減少し、失神するのが血管迷走神経反射です
また、痛み刺激が原因となって血圧低下、脈拍が低下する三叉神経迷走神経反射という反応もあります。
麻酔処置後に起こるため、麻酔アレルギーと勘違いされやすいものです。
昔麻酔で気分が悪くなったが、休んだら回復したという方は、これら生体反応であった可能性があります。
また、緊張や恐怖、精神的ストレスから起こる過呼吸発作があります。
紙袋を口に当てて、発作時に吐いた息を再び吸うという方法で対応するといいと言われていましたが、最近では酸素が不足することがわかり、この方法はとられなくなっています。
吸った息をゆっくりと吐きだす呼吸法を促して対応します。
可能であれば、腹式呼吸で息を吸って、数秒間息を止め、ゆっくりと息を吐きだします。
お腹をへこませることを意識して息を吐きだします。
過呼吸を起こしやすい方は意識して腹式呼吸をするとよいでしょう。
ゆったりとした呼吸を繰り返すと過呼吸の症状は落ち着いていきます。
いずれにしても、以前、麻酔で気分が悪くなった方は、治療の前に必ず申し出てください。
気分が悪くなったらどうしようと心配すると、気分が悪くなりやすくなります。
なるべく、気持ちを落ち着かせることが大切です。
麻酔は何時間くらい効くの?
麻酔が切れるまでの時間は個人差がありますので、何時間とはっきりは言えませんが、2時間~3時間が目安です。
効く時間が短い麻酔は1時間~1時間半で切れます。
麻酔が切れて感覚が元に戻ったことを確認してから、お食事をすることができます。
飲み物は、熱いものは温度がわからずやけどをする可能性がありますので、麻酔が効いているうちは、常温か冷たいものを飲んでください。
お子さんは、気にして手で触ったり、口を動かして噛んだりしやすいので特に注意をしてくださいね。
麻酔の前に
服用中の薬、治療中の疾患があれば必ずお知らせください。
歯科麻酔は、安全性が高く、他のお薬と飲み合わせがよくないということもありません。しかし、麻酔薬に入っているアドレナリン成分はわずかですが、注意しないといけないお薬や病気があります。
注意が必要な病気は高血圧、脳梗塞、狭心症、糖尿病、統合失調症やパーキンソン病などです。
麻酔時に血圧を測る場合もありますので、その際は、ご協力をお願いします。
麻酔の痛みを感じなくするためには、何よりリラックスすること、必要以上に緊張しないことが一番です。
極力麻酔時の痛みを和らげるために当院では表面麻酔、電動麻酔器を使用しています。
それでも怖い!という方は、スタッフに申し出てください。
※参考サイト テーマパーク8020 歯科麻酔
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index23.html
日本歯科麻酔学会 歯科麻酔Q&A