手術や治療を成功に導く鍵!周術期口腔ケアの重要性

2024年07月16日

周術期とは、入院、麻酔、手術、回復といった、手術前後の期間を含めた一連の期間のことです。

お口の中が不潔だと、術後肺炎になりやすくなったり、傷口が感染やすくなったりします。手術前後の口腔ケアを行うことで、誤嚥性肺炎の予防や傷口の感染リスクの軽減、入院日数の短縮といったことが報告されています。

周術期の口腔ケアの重要性

1.誤嚥性肺炎のリスク軽減

周術期口腔ケアで口腔内の細菌数を減らすことで、誤嚥性肺炎のリスクを大幅に減らすことができます。

2.手術後の回復促進

入院日数が減少することが報告されています。

3.手術部創部感染減少

口の中の菌が創部に感染しないようにします。

ケアをすることで悪い菌が減り、健康的な細菌叢に近づくことが報告されています。

4.抗がん剤・放射線治療による口内炎の減少

口の中をきれいに保つ、乾燥させないことで、口内炎の悪化を予防できる可能性があります。

周術期の口腔ケアがどうして必要なの?

西宮北口 歯医者 気管挿管全身麻酔を行う際、お口の中に管を入れて人工呼吸器につないで機械で呼吸をします。

この時、グラグラしている歯があると、管を入れる際に当たって抜ける可能性があります。

手術の前には、グラグラした歯が無い方が望ましいです。

口の中には、多くの細菌がいると言われていますが、お口が汚い状態だと、唾液が気管の中に流れ込んできて、肺炎を引き起こす可能性があります。

お口の中をきれいにしてから手術に臨みましょう

術後肺炎の原因は唾液中の細菌となります。血行感染を予防する目的で術前1週間前に行うことが望ましいと言われています。

 周術期口腔ケアの内容

周術期口腔ケアは、主に以下の内容で行われます。

口腔内のチェック:手術の問題となる虫歯、歯周病、入れ歯の状態などを診査します。

虫歯や歯周病で問題があれば治療します。

歯石除去: 歯石を除去します。

ブラッシング指導: 患者さんの状態に合わせたブラッシング方法を指導します。

義歯の調整: 義歯が合っていない場合は、調整します。

口腔内乾燥対策: 口腔内が乾燥しやすい場合は、保湿剤の使用を指導します。

外科手術の場合

全身麻酔時は、人工呼吸のためにお口の中に管を入れます。この時、お口の中の細菌が少ない方が、術後に肺炎や傷口の感染を減らすことがわかっています。

手術後の感染を抑えるためにも口腔ケアが必要です。

前歯が揺れている、かぶせ物が外れそうな歯があると、挿管時に歯が抜けたり、かぶせ物が外れたりすることがあります。

揺れている歯をつないで止めて置いたり、歯を抜いたり、あらかじめかぶせ物を外しておくなどの処置が必要となる場合があります。

放射線治療の場合

放射線治療は、がん細胞に放射線をあてて治療を行うものです。

がん細胞だけに放射線があたるようにしても、周りの正常な細胞にも放射線があたってしまいます。

口や喉や首周辺への放射線治療が行われた場合、口の周囲はもともと放射線の影響をうけやすいタイプの細胞のため、お口の中の正常細胞もダメージを受けてしまいます。

そのため、口内炎ができる、唾液腺のダメージによる唾液減少、唾液減少による口腔乾燥、虫歯リスクの上昇、顎の骨の炎症などが起こる可能性があります。

歯や詰め物がとがっていると、さらに粘膜状態が悪化しやすくなります。

とがっているところを削って丸めるなどの処置を術前に受けておく方がいいでしょう。

放射線治療後は、唾液の減少など、長期にわたって起こる副作用があるため、継続的に歯科受診をするとよいでしょう。

また、放射線治療時のイソジンガーグルでのうがいは、細菌抑制に効果があるので積極的に使用すると良いと言われています。

心臓の手術の場合

お口の中の細菌が血管を伝って、感染性心内膜炎などを引きおこすことがあると言われています。

これから人工血管、人工弁の手術などの手術を予定している方は、むし歯や歯周病をしっかりと治しておく必要があります。口腔内の感染症であるむし歯や歯周病に関与する細菌は、術後に血管や人工血管、人工弁に付着し、重篤な血管内膜炎や人工弁感染性心内膜炎などをおこすことがありますので、注意が必要です。

根の先に多くの膿がたまっている歯、元々抜歯になるような、歯周ポケットが深くかなりグラグラする歯、歯の根が割れていて膿が出ているような歯、抜歯を予定していたが放置しているような歯は、あらかじめ抜歯をしておく方がよいでしょう。

周術期口腔ケアを受けるタイミング

周術期口腔ケアは、手術の1~2週間前に行うのが理想的といわれています。

病気が見つかって、手術まであまり時間が無いということも多くあります。

入院準備や身の回りのことで忙しく、その合間で歯医者に行くことになると、さらに負担となります。

歯石除去だけならば、通院も1~2回で済むかもしれませんが、他の処置が必要となった場合、思ったよりも歯科治療の回数が必要となる場合もあります。

手術まで歯科治療が間に合わないということも起こりえます。

日頃からお口のケアをしておくと、いざというときに慌てなくてすみます。

周術期口腔ケアを受ける場所

かかりつけの歯医者さんがあれば、そちらで口腔ケアを受けるのがいいと思います。

手術をする病院の紹介状があれば一番わかりやすいのですが、紹介状がなくても、このような手術を受けるので、〇月〇日までに口腔ケアをしてもらいたいといえば、応じてくれるでしょう。

かかりつけが無い場合は、歯医者さんを探して受診することになりますが、その場合も手術を控えていることを事前に伝えて受診する方がいいでしょう。

がん診療連携登録歯科医といって、厚生労働省の委託を受けて日本歯科医師会が主催する「全国共通がん医科歯科連携講習会」を修了した歯科医師のリストがあります。

周術期管理について学んだ歯科医師となりますので、参考になさってください。

当院の歯科医師も講習を受けております。

※参考サイト がん診療連携登録歯科医名簿

https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/medical_treatment/dental/dentist_search.html

口腔外科があるような病院の場合、入院先で歯科医師や歯科衛生士がケアを行うこともあります。西宮市では兵庫医科大学病院、西宮市立中央病院、明和病院といった口腔外科のある病院では、周術期ケアがおこなわれています。

明和病院では全診療科における長時間の全身麻酔下手術の9割以上に口腔ケアを実施し術後肺炎の予防に努めているそうです。

まとめ

周術期口腔ケアは、安全な手術と早期回復のために重要であると認識されるようになってきました。周術期口腔ケアを受けて、清潔な状態で手術に臨みましょう。

特に、医師から術前に歯医者でケアを受けるよう指示があったときは、口腔ケアを受けるようにしましょう。

かかりつけの歯医者さんがあるとより安心ですよ。