インプラントにフッ素は悪影響?フッ素入り歯磨き粉は使ってもいいの?

2025年01月06日

西宮北口 歯医者 インプラントインプラント治療は、失われた歯にかわって咬み心地や見た目を回復するための治療法です。人工の歯根を顎の骨に埋めて、それを土台にして歯をつくる治療です。

厚生労働省によると、日本のインプラント普及率は約3.2%。

かなりの人数の方がインプラント治療を受けている計算になります。

※参考サイト 令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要

https://www.mhlw.go.jp/content/10804000/001112405.pdf

せっかくインプラント治療をしたのだから、長持ちさせたいと思いますよね。

どのようなものでお手入れしようかと調べた際に、「インプラントが入ったお口の中にフッ化物が入った歯磨き剤を使うと腐食する」という話をきいたことがあるかもしれません。

インプラントがあるとフッ化物が入った歯磨き剤は使ってはいけないのでしょうか。

時々患者様からも質問を受けますので、今回は、フッ素入り歯磨き剤の使用についてお話したいと思います。

インプラントがフッ素で腐食するという話

どうしてフッ素入り歯磨き剤がダメといわれるようになったのでしょうか。

フッ化物製剤によってインプラントの素材となるチタンの表面が腐食するという報告が出たことによります。

酸性環境下では、日常使用する歯磨き剤に入ったフッ素濃度でもチタン表面に腐食が起こるため、インプラントが入っている場合は、フッ化物製剤の使用は安易にしない方がいいと報告されています。

その報告がでたため、フッ化物が入った歯磨き剤はよくないのではないかということになりました。

そのため、インプラント患者さん用にフッ素無配合の歯磨き剤を勧めているメーカーもあります。

しかし、これらの報告は、人工的につくられたin-vitro研究です。

in vitroとは、「試験管内で」という意味で、試験管や培養器等の中で、生体から取り出した細胞等を用いて、人工的に環境を作り、体内同様の反応を行わせる試験のことを指します。

唾液の働き

実際の口腔内では、唾液の希釈作用のため、1000ppmのフッ素濃度であっても、ブラッシング最中には200~300ppmになり、ブラッシング後には数10ppmになると言われています。かなりフッ素濃度は低下します。

また、pHが低いほどチタンの侵襲のリスクがあがるといわれていますが、唾液には緩衝能といって、中和する働きがあるので、in-vitro研究と同じようなずっと低いpHのままということは実際生じるとは考えにくいです。

中性の状態ではフッ素配合歯磨剤を使用してもチタンの腐食がないではといわれているため、実際のお口の中では腐食が起こらないと考えられます。

フッ素入り歯磨き剤はつかってもいいの?

結論から言うと、フッ化物配合の歯磨き剤はつかっても大丈夫です。

実際のお口の中は、実験とは違い、条件的にチタンが腐食する可能性は低いと考えられるからです。

インプラント治療をされている大半の方は、ご自身の歯とインプラントの両方がお口の中にあることがほとんどかと思います。

フッ化物配合の歯磨き剤は、う蝕予防効果が高いと言われています。

西宮北口 歯医者 歯磨き剤お口の中が全てインプラントという方には、フッ素入り歯磨き剤を使う必要ありませんが、ご自身の歯がある場合は、残っている歯を虫歯から守るために、フッ素配合の歯磨き剤を使っても良いと思います。

フッ素のデメリットよりもメリットが多いと考えられるからです。

歯医者さんで塗るフッ素塗布といわれる高濃度のフッ素がありますが、こちらも唾液である程度希釈されますので、問題なく使用できると考えられます。気になる場合は、中性のフッ素であれば安心して使用できます。中性条件下では腐食しないからです。

※フッ素塗布の薬には酸性と中性タイプがあります。酸性の方が塗布回数が少なくて済みます。

 まとめ

インプラント治療は第2の永久歯といわれ、満足度も高い治療法ですが、治療後も適切なケアを行うことがとても大切です。

インプラントがお口の中に入っていても、通常の歯磨き剤を使うことは可能です。

フッ素入り歯磨き粉の使用は、インプラント以外の歯の虫歯を防いでくれます。

インプラントのケアの仕方、歯磨き剤で心配なことがあれば、気軽に当院スタッフにご相談ください。

※参考文献 日口腔インプラント学会誌 第30巻3号20-27

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsoi/30/3/30_174/_pdf/-char/ja