癖が歯並びに影響すると聞きましたが、どんな癖で起こりますか?
2023年06月22日
歯並びが悪くならないか心配ですとよくご相談いただきます。
歯並びが悪くなる原因は主に3つ、①顎の発育不足(40%)、②悪習癖(40%)、③歯の位置異常・先天性欠如や過剰歯によるもの(20%)と言われています。
このうち、悪習癖は、文字通り悪い「くせ」ですので、特に成長期に気を付けると改善が見込めます。
歯並びが悪くなっても矯正すればいいとお考えの方も、根本原因である悪習癖があると矯正しても元に戻りやすい、矯正の効果が出にくいなどの弊害がでますので、癖を無くす意識が大切となります。
悪習癖は主に次のようなものがあります。
- 指しゃぶり(吸指癖)
- 爪をかむ(咬爪癖)
- 舌を前に出す(舌突出癖)
- お口ぽかん(開口)
- 唇をかむ(咬唇癖)
- 頬杖・顎を押す(態癖)
- 舌が低い位置にある(低位舌)
指しゃぶり(吸指癖)
3歳ごろまでは、特に禁止する必要がないと言われていますが、3歳を目安に指しゃぶりはやめましょうとお話することが多いです。指しゃぶりは生理的なことで、不安や緊張を解消する、精神的な安定につながるとされていますが、指しゃぶりが続くと、歯並びに影響が出てきます。指しゃぶりは、歯だけではなく、顎の骨にまで影響が出てくることがあります。歯だけが影響を受けると思われている方も多いのですが、歯を支える顎の骨ごと影響を受けますので、早めにやめさせることをお勧めします。
日中は手や体を動かす遊びを取り入れるなど、他に夢中になることがあれば指しゃぶりを減らすことができます。
ある程度理解できるようになってからになりますが、子供と向き合ってきちんと話をする、指しゃぶりをしていないときにほめてあげることで指しゃぶりしなくなるように誘導する、直接的ではありませんが、指しゃぶりについての絵本を読んで、自分の指しゃぶりにつて子供自身に考えてもらうという方法があります。
それでも、まったく指しゃぶりが無くなりませんという場合、手に靴下をはめる、手袋をはめる、指サックをはめる、市販の指しゃぶり防止マニキュア、クリームを塗るなども対策もあります。
寝るときの指しゃぶりがなかなかやめられないというお話もうかがいます。寝つくのを待つ間に、おうちの人が手をつなぐ、本好きでしたら絵本を読んであげるようにお伝えしています。
3~4歳までに指しゃぶりをやめることができれば、自然に歯並びも改善してくる可能性があります。何をしても、やめてくれないという強者も中にはいますが、まずは、できることから始めてください。
※本来は指しゃぶりが無くなると歯並びは改善しますが、他の習癖があると、改善しないこともあります。
爪を咬む(咬爪癖)
爪を咬む癖は、3歳から始まり学童期に多くなるといわれており、欲求不満、過度の緊張、不安などの心理的要因で生じ、精神的な緊張を解消する手段として爪を咬むと言われています。
爪を咬む癖があると、前歯に影響が出てきます。咬み方によっては、前歯に隙間が出たり、前歯がすり減ったり、程度がひどいと、前歯が咬まない状態になることもあります。
爪を咬むことで菌を口の中に入れてしまうので、風邪も心配になりますね。
もちろん、深爪になったり、爪の先がギザギザになったりするので、爪にも良くないです。
子どもの爪咬みは、大人になるにつれて咬まなくなっていくこともありますが、癖をやめたい場合は、指しゃぶりと同様に、マニュキュア・クリーム等があります。
舌を前に出す(舌突出癖)
舌を無意識のうちに習慣的に運動させることを弄舌癖と言います。その中でも、舌を前に出す場合を舌突出癖と言います。
指しゃぶりがやめられず継続することで、前歯が開いてしまったところに舌を入れてしまう場合、上の乳歯の前歯が抜けた後、生えてこない永久歯の場所に舌を突っ込んだりする場合などがあります。
扁桃腺肥大、アレルギー性鼻炎など、鼻で呼吸できず、口で呼吸する(口呼吸)のために生じることがあります。
この癖があると、前歯が咬まなくなる状態(開咬)や上の歯が前にでる(上顎前突)という状態になり、場合によってはサ行の発音が不明瞭になったり、顎の発育に影響が出たりします。
ハビットブレーカーという習癖防止装置を使用する、筋機能訓練をして舌を意図通りにコントロールするようにすることで改善を試みます。
お口ぽかん(開口)
口元がいつも開いている状態です。
鼻呼吸ができていない場合、口呼吸になります。原因としては、前項に挙げた鼻咽腔疾患により鼻呼吸が難しいことや、前歯がでていることで、口を閉めることが難しいなどがあります。
口がいつも開いていると、前歯が咬まない、前歯が出る(上顎前突)、歯の並ぶところが狭くなる(上顎歯列弓の狭窄)、歯肉炎・歯周炎になりやすくなるなどが起こります。
鼻が原因で口呼吸になる場合は、専門医(耳鼻科咽喉科)受診をして、鼻を使った呼吸ができるようになってから、機能訓練をします。鼻呼吸可能な場合は、機能訓練から始めることができます。
事前検査として、口を閉める力があるか計測をします。当院では「りっぷるくん」を使用しています。客観的にお口を閉める力があるかどうかを測定するものです。
機能訓練としては、唇を閉じる訓練をしてもらうことになりますが、継続して行うことで徐々に効果が出てきます。口の周りの筋肉を鍛える「りっぷるとれーなー」や「風船ふくらまし」などをしてもらうことで筋トレしてもらいます。他に、割りばしをくわえる練習などもあります。
唇をかむ(咬唇癖)
上の前歯の裏に下の唇を挟み込むような癖のことです。
挟み込まれた下唇が上の前歯を外側に押すため、前歯が前方に出てきます。
いわゆる出っ歯の状態になります。歯が前方に出てくると、さらに唇が挟まりやすくなり、癖が促されるという悪循環になります。それだけではなく、挟み込まれた下唇に押されて、下の前歯も内側に入ってしまい、下の歯の歯並びが悪くなることもあります。
唇を咬む癖は、乳歯のときに起こっていてもそれほど歯並びに影響はありません。
永久歯が生えてきたら要注意です。
前歯が出てきてしまうとどうしても下唇が挟まれやすくなるため、矯正で改善する方法もあります。下顎を前に出して、前歯同士を合わせることで隙間を無くし、唇を挟まないようにする訓練をすることもあります。また、前項で述べたお口ぽかんも一緒に起こることが多いので、お口周りの筋肉を鍛える機能訓練を合わせて行います。
まれに、下の前歯で上唇を咬む癖がある方もいます。この場合は、反対咬合の原因となるため要注意です。
頬杖・顎を押す
頬杖、気づくとついていたりしませんか?
頬杖以外でも、うつぶせ寝、机に突っ伏して寝るなど、顔に圧力が加わると下の顎が横にずれて、顔が非対称になってしまう場合があります。頬杖では20N、うつぶせ寝では44Nもの力が加わっているそうです。さらに頭の重みが加わってかなりの圧がかかります。
特に、子供の時期に毎日数時間も力がかかり続けると、顎がずれて、顔が非対称になる可能性が出てくると言われています。
うつぶせ寝の頻度・程度にもよりますが、体の反応は個人差が大きいので、うつぶせ寝をしているから必ず顔が非対称になるということではありません。
顎の変形やずれは骨格の問題になることも多く、一般的な矯正治療だけでは治療が難しくなることも多いので、頬杖くらいと思わずに、しっかりとした姿勢を保つよう意識してくださいね。
テーマパーク8020
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index09.html
舌が低い位置にある(低位舌)
安静にしているときに、舌が下顎についている状態を低位舌といいます。
低位舌では、いつも舌が下の前歯についていて、下の奥歯のかみ合わせを覆う状態になっていることが多いです。低位舌は、いつも舌で下の歯を前方の押すため、反対咬合になったり歯の間に隙間ができたりします。
原因としては、鼻の疾患や扁桃腺肥大による口呼吸が挙げられます。鼻の通りが悪いと口で空気の通り道を確保するために舌が低位になります。この場合は前項と同様に、歯科だけでの改善は難しいので、専門医(耳鼻咽喉科)受診をお願いしています。
他の原因としては舌小帯(舌の裏側のすじ)が短いことにより、舌の運動が制限されることがあります。舌小帯が短いと、常に舌が低い位置にあるようになります。時々発音にも影響がでます。
また、前項に出た舌突出癖を伴うこともあります。
習慣性の低位舌の場合は、機能訓練を行います。
舌が低位にあるお子さんは、まずは舌が上あごにつくことを覚えていただかないといけないのですが、今まで舌を上あごにつけたことが無いので時間がかかります。
舌の先を上あごにつけるだけではなく、舌の全体を上あごに吸い付ける感覚を覚えてもらうことが大切になります。よく行うのが、舌を上あごにつけて吸い上げて口を大きく開いて、舌で上あごをはじくようにポンッと音を立てるポッピングといわれる訓練や、舌を上あごにつけたまま口を開けたり閉じたりする訓練です。
ちょっとした癖なのですが、上記のように歯並びにかかわってきます。
癖は改善しようとすればある程度は改善が見込めます。
特にこどものうちに改善できると歯並びの改善も見込めます。
お子さん自身の自覚とご家庭でのサポートが必要になりますが、悪習癖に気付いたらすこしでも改善していくようにしましょう。