タバコはお口の健康にも影響あり!
2023年07月06日
タバコの害と言えば何を思い浮かべますか?
肺の病気、慢性閉塞性肺疾患(COPD)でしょうか。
それとも「がん」でしょうか。
タバコの煙の中には、約5300種類の化学物質が含まれており、その中には約70種類の発がん性物質も含まれていると言われています。有害物質はタバコを吸うと肺に到達し、血液を通じて全身に運ばれて、DNAに傷をつけるなどしてがんの原因になるといわれています。口腔・咽頭がんもタバコとの因果関係があるがんの一つといわれています。
喫煙者は非喫煙者の2.4倍も口腔・咽頭がんになるリスクが高いという報告があります。
タバコは、様々な病気に関わりがあるといわれていますが、歯周病にも影響があります。
2020年4月から紙巻たばこのパッケージに「喫煙は、あなたが歯周病になる危険性を高めます」という文言が加わったのをご存じでしょうか。
喫煙者は歯周病になりやすく、悪化しやすいのです。
どうしてタバコは歯周病に悪いの?
タバコは歯周病にとって悪いといいますが、その要因は喫煙によって起こる様々なことが関係しています。喫煙によって歯周病が進行しやすく、また治りにくくなるため、悪循環が生じるのです。
タバコの成分は口の粘膜や歯茎から吸収されます。成分であるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素はヘモグロビン濃度を低下させるので歯茎の血行も悪くなります。
血行が悪くなると、歯茎に十分な酸素が供給されなくなり、酸素がない状態で増える歯周ポケット内の歯周病菌が増殖しやすくなります。喫煙者の歯周病菌は病原性のある細菌の比率が高いことも報告されています。
タバコは歯周病菌と戦うための白血球の働きも低下させるため、歯周病菌がさらに増殖していきます。さらに、喫煙者では唾液の分泌量が低下するため、細菌の繁殖を抑えづらくなります。
タバコに含まれるニコチンが歯周病の原因菌のバイオフィルム形成能を高めることも報告されています。バイオフィルムとは細菌の塊のことです。
細菌は毒素を作り出し、歯周ポケットを深くすると同時に歯を支える骨を溶かしていきます。骨が少なくなると、歯がグラグラと揺れて、最終的には、歯を失うことになります。
このように、タバコは体と歯周病菌に作用することで歯周病を進行させます。
喫煙されている方は、歯茎からも血が出ないし、歯茎も腫れてないし、歯周病にかかっている自覚はあまりないかもしれません。
喫煙により血行不良がおこるため、歯周病のサインである出血や腫れが出にくく、歯周病にかかっていることも気づきにくいのです。
喫煙は歯周病だけではなく、歯周病治療に対してもマイナスに働きます。
歯周病治療は歯石除去とご自身の歯磨きの両輪で治療していきますが、歯茎の表面を覆う上皮細胞や、治癒にかかわる線維芽細胞と言われる細胞の機能をたばこの有害物質が妨げるため、細胞の治癒機能が低下して、治療をしても歯周病が治りにくくなります。
喫煙により「ヤニ」が歯の表面に付きますが、表面がザラザラするので、細菌が張り付きやすくなります。さらに、ヤニの着色からは、ニコチンがすこしずつ染み出しているのです。
禁煙するとどうなるの?
禁煙すると、歯周病、口腔がんともに疾患リスクは低下します。10年禁煙すると、非喫煙者と同じリスクにまで下がるそうです。
10年も!と思われるかもしれませんが、歯茎は短期間で改善していきます。
禁煙をすると歯肉の血流は数日~数週間で回復し、歯茎の免疫反応も数週間で回復し、1年後には、本来の歯茎の健康を取り戻すといわれています。時間はかかりますが、継続して禁煙することで歯茎の黒ずみも改善してきます。
禁煙すると、急に歯周病が悪化したような症状が出る場合があります。
歯茎から血が出た!歯茎が腫れた!などです。
タバコで隠されていた本来の症状が、タバコの影響が無くなり表に出てきたことによります。本来の状態になっただけですので、タバコをやめたから歯周病が悪くなったということではありません。
タバコをやめるのは大変なことですが、禁煙によって、治療効果も上がります。
将来歯周病で歯を失い、食べる楽しみが無くなる前に禁煙考えてみませんか?
受動喫煙について
受動喫煙の影響は様々言われていますが、歯周病に関しても受動喫煙の影響はあります。むしろ、受動喫煙の方が歯周病になるリスクが高いという報告まであるのです。
また、受動喫煙と子どもの虫歯との因果関係が示唆されています。
家庭内受動喫煙がある子どもは、ない子どもと比較して虫歯が多く、喫煙者が多くなるとさらに虫歯が増加したという報告があります。
兵庫県では受動喫煙防止条例があり、20歳未満の者や妊婦を受動喫煙から守るための措置や、禁煙区域が定められたりしています。20歳未満の者や妊婦の近くでの喫煙は禁止、または妊婦は喫煙禁止です。20歳未満の者や妊婦と一緒のときは家庭の居室や車内でも喫煙禁止です。お祭りや縁日などたくさんの人が集まる屋外で周囲に20歳未満の者や妊婦かいるときや、通学時間帯の通学路は喫煙禁止です。
学校・病院等は敷地内及びその周辺でも禁煙です。
当院も禁煙になります。
新型タバコについて
新型タバコは加熱式タバコと電子タバコの2種類ありますで、日本では、加熱式タバコが主流です。新型タバコは、電気的に加熱して出てきたエアロゾルを吸引します。エアロゾルとは、微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合物です。
加熱式タバコの場合は、タバコ葉を電気的に加熱して発生させたニコチンを含むエアロゾルを吸引するタイプや、エアロゾルをタバコ葉に通すタイプなどがあります。
新型タバコは市場に登場してから日が浅いため、紙巻タバコに比べて健康への影響が少ないかどうかはまだはっきりしていません。
口腔内に関しても、現時点ではほとんど研究が見られず、エアロゾルに含まれるニコチンが何らかの影響を与えるのではないかと推測されているという状態です。
新型タバコは従来の紙まきタバコよりも害が少ないと思って吸っている方もいるかもしれませんが、有害物質が含まれていることに変わりはありません。
紙巻タバコに比較して、加熱式タバコの一酸化炭素はかなり低く、発がん物質もかなり少ないのですが、ニコチンは紙巻タバコと同等、タールはやや低いものの、粒子状物質はやや高かったという報告があります。
ニコチン・タール以外の有害物質は減少するかもしれませんが、有害物質はこのくらいなら安全という安全域はなく、減った分だけリスクも減るのかは未知数です。
加熱式タバコ=安全なタバコとはなりません。
禁煙のために加熱式タバコを使ってみていますという方もいらっしゃるかと思います。健康を気遣う気持ちは大切ですが、そこに落とし穴があります。
加熱式タバコは、ニコチンが紙巻タバコと同等に含まれているため、紙巻タバコと同じようにニコチン依存症になります。害がないと思って使用していると、ニコチン依存から抜けることが難しくなってしまいます。
※参考サイト:日本臨床歯周病学会 新型タバコ、特に加熱式タバコに関する注意喚起
https://www.perio.jp/file/news/info_211109.pdf
禁煙のすすめ
タバコを吸う人は令和元年2019年調査では、男性27.1%女性7.6%いると言われています。
タバコは時間を奪われる、皮膚への影響から老けて見える、たばこ代がかかる、病気になって医療費がかかる、家族へも影響が出るというなど生活面でのデメリットがあります。
昔は、仕事上、タバコによるコミュニケーションが必要という一面があったかもしれませんが、現在、時代も変化し、禁煙支援をしている企業や、採用時に喫煙者は採用しないという企業も出てくるようになりました。
喫煙者はどんどん肩身が狭くなっているようです。
健康が気になっている方、もう一歩踏み出して、禁煙について考えてみませんか。
禁煙というと、自力で強い意志で行うものというイメージがありますが、昔に比べて、禁煙外来でお薬とカウンセリングの活用で楽に禁煙ができるようになっています。禁煙治療用アプリというものもあります。2020年からは一部医療機関ですが、スマホを利用した遠隔治療も可能になっています。
お薬を利用した場合、自力での禁煙よりも3~4倍も禁煙しやすくなるという海外の報告もあります。
是非、お薬や禁煙外来を活用して、禁煙を成功させてください。
禁煙支援については厚生労働省のページにも載っています。
参考になさってください。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco-summaries/t-06