子どもが仕上げ磨きを嫌がる・・それでも歯磨きをしないといけないときは?
2023年08月31日
子どもが歯磨きを嫌がります。あんまり磨けてないのですが、大丈夫でしょうか?というご相談をよく受けます。
2歳くらいはとくにいやがりますよね。
押さえつけて歯磨きするのがかわいそうで、歯磨きできていないんですと連れてきたお子さんのお口の中が、虫歯だらけだったということがあります。
押さえつけるのがかわいそうなのもわかります。
歯医者の立場からすると、磨いてもらいたいな・・・と思います。
歯磨きしない結果、虫歯がたくさんできても、2歳で一般的な虫歯治療を行うのは難しいからです。
一人で治療用の椅子に座ることができない状態で治療はできません。
やはり、毎日歯磨きをしてもらう方が結果として大変な思いをせずにすみます。
では、少しでも嫌がらないように歯磨きをしてもらうために、どんな工夫ができるのでしょう。
どうして嫌がったりするのか原因から考えてみたいと思います。
目次
怖い顔で磨いていませんか?
歯磨きするのに必死になりすぎて、怖い顔で歯磨きをしている場合、いつもと違う保護者の様子にお子さんが嫌がるということがあります。保護者が緊張の面持ちで臨むと、いやなことをされると思うのです。
リラックスして、楽しそうに歯磨きをするといいと言われています。
なかなか難しい!という方にお勧めなのは、遊びながら磨くということです。
歌を歌いながら磨くだけでも楽しい感じになります。
また、手助けがある場合には、手や足を使った遊びを歯磨き時間でしてもらってもいいでしょう。多少振動があり磨きにくくなるかもしれませんが、お子さんが遊びに気を取られている間に磨くことができます。大暴れされるよりは楽です。
好きなぬいぐるみで「すごーい!ピカピカになってきたよ」など励ましつつ、仕上げ磨きをしている方や、歯みがき動画を見せながらしている方も。
子供からしたら、保護者を一人占めできる時間、保護者も1対1でお子さんに向き合う時間になります。
子どものため一所懸命に歯磨きをしてくださっている保護者の方も、少し楽しい気持ちで臨んでもらえたらいい歯磨きの時間になります。
歯みがきのとき、痛い思いをさせていませんか?
仕上げ磨きのときは、なるべく痛くならないように磨く必要があります。
歯ブラシの毛先が色々なところに当たると、子供は痛がって嫌がります。
そこで、まずはお子さんを保護者の膝の上に寝かせて口の中をしっかりと見ることができるようにします。
保護者の両足で子供の肩が動かないよう固定すると安定しやすくなります。
動いたりする際にも有効です。
お子さんが安定すると、狙ったところに歯ブラシを当てやすくなります。
もし、お子さん用と仕上げ磨き用の歯ブラシを兼用している場合は、分けてください。
仕上げ磨き専用には、ヘッドの小さめの歯ブラシがお勧めです。
植毛が密になっているものの方が、早く汚れを落とすことができます。
子ども用、仕上げ磨き用の歯ブラシは、毛先が丸く加工されているので、歯茎に当たった際も痛みにくくなっています。
そのような歯ブラシでも、毛先が開いていると思わぬところを触ってしまいますので、毛先が開いていないものを使用してください。
上前歯のヒダを上唇小帯と言いますが、ここに毛先があたると痛みます。
また、上の前歯は感覚が過敏になりやすいところなので、触られると嫌がります。
上唇小帯を左手の人差し指で隠して磨くと、指が上唇小帯をガードしてくれるので、磨いても痛みを与えることが無くなりますし、唇を排除できるので、しっかりと磨くこともできます。
後は、ゴシゴシでなく、シャカシャカというくらい、軽い力で磨くことが大切です。
泣くと、歯磨きをやめる・・・と繰り返していませんか?
泣けば、やめてくれるのではないか?という期待から泣きます。
泣いたらやめてくれたことを覚えると、次も泣いたらやめてもらえると思います。
そのため、泣くのです。
この場合は、泣いても歯磨きはなくならないことを教えなければなりません。
かわいそうという気持ちをぐっとこらえて、歯磨きをしてください。
もちろん、泣く原因は一つではなく、複数の原因が重なって泣くということもありますので、怖い顔していないかな?痛みを与える歯磨きをしていないかな?と1つ1つ確認してみてください。
唾を飲み込むタイミングが必要です
さて、それでも歯磨きを嫌がりますという場合・・・長く磨いていませんか?
唾を飲み込むタイミングを作ってあげていますか?
子供は、歯ブラシを口に入れると、息を止めていることが多いです。
やっとお口を開けてくれたから今のうちになるべく多く磨こうとしてしまいますが、息を止めていれば、長くは続きません。
苦しくなると嫌がります。
年齢が高くなると、鼻で呼吸をしてくれるようになりますが、歯磨きに慣れてないうちはまだ切り替えがうまくできません。
とくに鼻が詰まっているときは、口で呼吸をしていますから、歯ブラシが入れられていると、呼吸がうまくできません。
そして、唾が口のなかにたまります。小さいうちは特に唾が多くダラダラよだれが出ているお子さんもいらっしゃいます。
歯磨きにお子さんが慣れるまでは、短時間で歯ブラシを口の中から抜いて、唾を一回飲んでもらいましょう。
それと同時にお子さんは息をすることができます。
はじめのうちは、短く磨いて休憩を繰り返して、お子さんが歯磨きに慣れてくるのを待ちましょう。
慣れてくると、長く磨くことができるようになってきます。
暴れて、短い時間しか磨く時間が取れない場合は、短時間で落とすことができるくらいの歯垢にする工夫をしましょう。
部屋を汚さなければ掃除がラクと同じで、歯垢が多くなければ、落とすのもラクなのです。
砂糖を制限して、歯垢を増やさないようにすれば、落とす時間を短縮できます。
子どもがぐずって仕上げ磨きができませんというときには・・・
夜、仕上げ磨きをしようとしたら、子供の機嫌が悪い・・・ぐずるという時には、一番虫歯になりやすいところから磨くようにしてください。
下の前歯は見やすいし、磨きやすいので、そこから磨いてしまいがちですが、下の前歯は虫歯になりにくいところです。
虫歯のリスクから考えると、1歳半から2歳は上の前歯。乳歯が全部生えそろったら、奥歯を磨くようにしましょう。
一方、時間がある、機嫌がいいというときは、長く磨いて、歯磨きに慣れてもらいましょう。
その時は、嫌がる敏感な前歯ではなく、奥歯から磨くと、嫌なことが最後になるので、全体をしっかり磨いてあげることができます。
2歳児あるある
少し年齢が高く2~3歳になると、こんなことがあります。
「いや!(自分で)磨く!」
うちの子、自分で磨くことはするのですが、仕上げ磨きさせてくれないので、一人で磨いてもらっています。
それだけでは、磨き残しが出てしまい、虫歯になるリスクが上がります。
とはいえ、自立心があるのはいいことです。まずはお子さんに磨いてもらいましょう。
低年齢で磨き切ることは難しいので、「きれいに磨けているか見せて~」と保護者の方が確認した方が安心です。
「すごい!ぴかぴかに磨けているよ!ちょっとまだここが汚れているから磨いてあげるね」と言って仕上げ磨きへ誘導しましょう。
仕上げに、お子さんが好きなキャラクターの歯ブラシを使うものいいですね。
好きなキャラクターの歯ブラシがないときは、歯ブラシにシールを貼って、お気に入り歯ブラシを作るのもいいですよ。
仕上げ磨きの歯ブラシに少し触らせながら、自分が磨いている!を演出して仕上げ磨きする方法もあります。少し歯ブラシは動かしにくくなったりしますが。
ちょっと落ち着く3歳頃になったら、フロスも使って仕上げ磨きをすると、より磨き残しが無くなります。
余裕が出たら是非使ってみてくださいね。
お子さんの検診では、衛生士から歯磨きの仕方の説明を受けるかと思います。
話をきいても、保護者の方もすぐにはできるようにはなりませんし、お子さんもすぐに慣れてくれるわけではありません。
毎日嫌がる子どもに向き合うのは大変ですが、慣れてくるには時間がかかりますので、あきらめず仕上げ磨きを続けてください。
一度聞いてすぐにできる方はあまりいませんので、この間も仕上げ磨きの仕方を聞いたのだけれど、もう一回聞いてもいいのかな?前回大丈夫と言われたけれど、やっぱり気になるということがあれば気軽にご相談くださいね。
※参考サイト 歯の磨き方 日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/hamigaki/
※参考文献
クインテッセンス出版 「子どもを泣かせないための17の裏ワザ」