歯の形態異常について~その1 癒合歯
2023年09月23日
生まれつき、歯の形態が通常の形態と異なることがあります
形態異常の中で、よく保護者の方からご相談を受けるのが癒合歯(ゆごうし)です。
市の検診などで指摘されるので、ご心配になることも多いようです。
癒合歯は、歯の持つ個性のようなものと考えていただき、個性に応じた対応をしていただくのがいいと思います。
癒合歯(ゆごうし)とは?
2つの歯が1つになったような形をしています。
何らかの原因で歯ができる過程で歯の元になる歯胚がくっついたためにできた歯という説が有力です。お腹の中にいた時に何かしたから癒合歯になったのではないかとお考えの保護者の方もいらっしゃいますが、はっきりとした原因は不明です。
今後を考えていきましょう。
癒合歯はどこにできるの?
癒合歯は、乳歯の下の前歯、上の前歯にできることが多く、日本人は3~4%と欧米よりの高い確率で出現すると言われています。下の歯の方がやや出現率は高めです。
永久歯が癒合歯になるのはごくまれです。
癒合歯の治療はどうするの?
癒合歯に対して何か特別な処置というものは必要ありません。2つに歯を分けることもしません。
くっついた部分が溝になるのですが、溝の部分には汚れがたまりやすく、虫歯になりやすいので、しっかりと仕上げ磨きをする必要があります。
特に歯の内側に溝がある場合は、とても磨きにくくなります
虫歯が進行してしまった場合、特に神経といわれるところまで虫歯が進行すると、神経の構造が複雑なこともあり治療が困難になります。そもそも、低年齢での虫歯治療はできないこともありますので、虫歯にしないようなケアが必要です。
お勧めの歯ブラシはタフトブラシです。タフトブラシは毛先が一つのヘッドでできた小さな歯ブラシです。毛先が届きにくいところを清掃するのに向いています。
その他、フッ素応用で歯の質を強くする、シーラントという歯の溝をあらかじめ埋めておく方法で虫歯を予防しましょう。
※当院の参考ブログ シーラントについて
https://www.aobahiro-dc.com/column/2023/3494/
乳歯が癒合歯の場合、永久歯はどうなるの?
乳歯が癒合歯だからといって、後から生える永久歯も必ず癒合歯になるということではありません。
ただし、乳歯の癒合歯がある場合、後から生える永久歯が存在していないことがあります。
癒合歯の後から生える永久歯がない確率は通常よりも高く40~50%と言われています。
必ず永久歯の数が足りなくなるということではありませんが、永久歯のない確率は高いと思っていてください。
癒合歯がどこにあるかでも永久歯があるかどうかの確率が変わり、乳中切歯と乳側切歯の癒合歯は約2割、乳側切歯と乳犬歯の癒合歯は7割以上永久歯が無かったという報告もあります。
レントゲン撮影ができる年齢になれば、永久歯の本数を確認することができます。
永久歯の生え変わりのタイミングで一度確認しておくといいでしょう。
歯並びは大丈夫?
癒合歯は、歯と歯がくっついているために、乳歯2本分より歯の幅が少なくなります。
後から生える永久歯が2本ある場合、生え変わりの際に永久歯の生える場所が足りなくなり、歯が重なって生えてきたり、ねじれて生えたりすることがあります。
将来的には、矯正治療が必要となる場合もあります。
歯の生え変わりは、乳歯の根っこの部分が徐々に溶けてなくなること(歯根吸収)で乳歯がグラグラしてきます。
その下から永久歯が生えてきます。
癒合歯の場合、歯根吸収がうまくいかないことがあります。
そのため乳歯がなかなか抜けず、自然に永久歯へ交換しないこともあります。その場合は、抜歯が必要になることもあります。
歯の形、歯の本数は、どうすることもできません。
ある程度の年齢になるまでは、癒合歯を虫歯にしないようにケアをしましょう。
気になることが出たら早めにご相談くださいね。
※参考サイト 日本小児歯科学会
母子健康手帳 「歯の健康診査」記載マニュアル 歯の形態・色調の異常の考え方と判断について