フッ素塗布はいつからできる?どんな薬を塗るの?安全性は?
2024年02月22日
フッ素塗布とは、高濃度のフッ化物を歯科医師、歯科衛生士が歯面に直接塗布する方法です。
フッ素の取り込みが大きい生えた直後の歯に対して行うのが最も効果的とされています。
生えてから2~3年の歯が虫歯になりやすいため、歯医者さんで繰り返しフッ素塗布をしてもらうといいでしょう。
特に1歳から13歳に推奨していますが、歯の根元や歯の間の虫歯になる大人にも有効です。
歯科疾患実態調査によると、フッ化物歯面塗布を受けたことがある人の割合は、1999年に42%でしたが、2005年に59.2%と50%を超えて、2016年には62.5%になりました。
母子手帳にも「歯にフッ化物(フッ素)の塗布やフッ素入り歯磨きの使用をしていますか」という質問事項が記載されています。
1歳6か月のページにもこの項目があります。
「はい」の位置をみますと、「はい」がより望ましい回答と思われますので、この時期からフッ素塗布やフッ素入り歯磨き剤を使用することが可能ですということになります。
当院では、上の前歯が生えたらフッ素塗布ができるとお伝えしています。
どんな薬を塗るの?
日本で認可されているフッ化物歯面塗布剤は5品目あります。
剤型は3種類あり、液体のもの、ジェルタイプ、フォーム状のものがあります。
また、酸性と中性のものがあります。
子供の歯には、中性タイプよりも酸性のタイプの方が歯との反応性がいいので酸性タイプを塗布します。
どうしても味が苦手というお子様には、フォームタイプの中性を塗布しています。
配合濃度はフッ化ナトリウムとして2%(フッ化物イオン濃度として9000ppm)です。
市販されている歯磨き剤の濃度の6倍はある高濃度なものです。
当院では日本で認可された薬剤以外は使用していません。
一番人気は青りんご味のフッ素(酸性タイプ)です。
どのように塗るの?
3つの方法があります。
綿球・綿棒法:小綿球や綿棒に薬剤を浸して塗ります。
歯ブラシ法:歯ブラシを用いて薬剤を塗ります。
通常の歯磨きの延長でお子さんにも受け入れられやすいです。
歯科治療が上手にできないお子様にも。
トレー法:既成のトレー製剤を載せて、歯面に接触させる方法です。
上手に歯科治療ができるお子さんに限られます。
嘔吐反射のある方には向きません。
※当院では現在この方法は採用しておりません。
フッ素塗布の際には、歯磨き・歯面清掃をしてから塗布をしますが、その場での歯磨きが上手にできないお子様の場合は、そのままのお口の状態で塗布をしております。
多少磨き残しがあっても効果に大きな違いはないという報告があります。
1歳~2歳のお子様は慣れない場所での歯磨きに戸惑うこともあります。
ご心配な方は自宅で歯磨きをしてからお越しください。
痛い処置ではありませんので、受診の際は、大丈夫だよ、歯を強くしてもらおうねというプラスの声掛けをお願いします。
フッ素は歯に効くの?
高濃度フッ素は、歯の表面に塗ると作られるフッ化カルシウムからフッ化物イオンが放出され、歯の脱灰抑制と再石灰化を促進するとともに、歯の結晶であるヒドロキシアパタイトをフッ素化アパタイトに変えます。
フッ化アパタイトは酸に溶けにくい=歯を強くするのですが、徐々に消失してしまいますので、定期的に塗る必要があるのです。
フッ素塗布は1回受けるだけでは期待する効果は得られません。
少なくとも半年に1回は塗布する必要があると言われています。
乳幼児に定期的に塗布した場合は、虫歯を半減!
永久歯に対しての予防効果は20-30%の報告が多いようです。
虫歯のリスクが低い方は半年に1回ですが、通常のリスクの方は4か月に1回、虫歯になりやすい方は3か月に1回の塗布をお勧めしています
フッ素は危険??
フッ素は危険なのでは?と不安に思っている方もいるかと思います。
最近、有機フッ素化合物PFASのニュースもありフッ素は良くないと思われている方もいるようです。
歯科医院で塗布するのは、無機フッ素化合物のフッ化ナトリウムというもので、自然界にも存在しています。一方、有機フッ素化合物は自然界には存在せず、人工的に合成されたもので、界面活性剤として広く利用されています。
歯科で使用しているフッ素は無機フッ素化合物ですので、全く違うものです。
※小児歯科学会 PFAS と歯科で使用する無機フッ素化合物について
https://www.jspd.or.jp/recommendation/pdf/202303.pdf
高濃度のフッ化物を塗布する際に気を付けなければならないのは、急性中毒です。
特に、小さなお子さんに対して気を付けますが、当院で乳歯列(乳歯だけが生えているお口の中)に使用する量は1gです。
1gに入っているフッ化物の量は9mg。
※フッ素濃度(%)=ppm×0.0001 9000ppm=0.9%
10kgの子供がフッ素をすべて飲んだとしても、1kg体重当たり0.9㎎です。
急性中毒が起こる量は、体重1kg当たり5㎎~10㎎ですので急性中毒の心配はありません。
永久歯が生えている小児に使用する薬剤量は最大2g以内です。
こちらも急性中毒にはならない量です。
急性中毒は、一度に4-5人分を飲み込まない限りは起こりませんので、塗布後に飲み込んでしまったとしても心配する量ではありません。
適正にフッ素塗布をしたときにお口に残るフッ素の量は1~3㎎と言われています。
※参考サイト e-ヘルスネット フッ素の急性中毒量
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-008.html
フッ素塗布後の注意事項は?
塗った後30分は飲食やうがいをしないでください。
また、酸性のフッ化物を塗布した直後は、着色防止のために、カレーなど色素の強い飲食物の摂取を控えるといいでしょう
フッ素塗布は虫歯予防に効果的ですが、塗れば虫歯に絶対ならないというものではありません。食習慣の改善、歯磨きの励行が大切です。
患者様の中には、フッ素応用を希望されない方もいらっしゃいます。
当院では、希望しない方にはフッ素塗布はしておりません。
食生活とセルフケアのサポートで対応しております。
詳しくは衛生士にお尋ねください。
※参考サイト e-ヘルスネット フッ化物歯面塗布
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-02-008.html