乳歯をぶつけてしまった!どんな処置をするの?
2024年04月12日
ちょっと目を離したすきに子供が転んで、顔からぶつかった。
顔を上げたら、口から血が・・・びっくりしますよね。
歯の周りからも血が出ている、歯をぶつけた!とつい歯に目が行ってしまいますが、まずは頭を強く打っていないか、呼びかけに応じるかどうかをまずは確認してください。
視点が合わない、朦朧としている、目の周り、耳の後ろに内出血がある、鼻からの出血がある、嘔吐があるときは、すぐに歯科ではなく、お医者さんに連れて行ってください。
特に上記の症状が無い場合は、出血したところを確認して、清潔なガーゼ・ハンカチで良いので押さえましょう。
しばらくすると血も止まってくるはずです。
血は飲み込まずになるべく吐き出させるようにしましょう。
全身状態に問題が無い場合は歯医者さんに連絡を入れましょう。
歯医者さんに行くときは、ケガをしたときの状況がわかる人が付き添いに行く方がいいでしょう。
余裕があれば、スマホで受傷状況の写真を撮影しておくと受診時、ケガの状況を説明するのに役に立ちます。
目次
歯をぶつけてしまったら 年齢による違い
0~2歳(乳歯の生え始め)
ひとり立ちや一人歩きを始めるために、動きが活発となり、乳歯をぶつけることが多くなってくる時期です。乳歯の外傷は1~3歳に起こりやすいと言われています。
この時期は、歯科の診療台に一人で座って治療を受けることができる時期ではありません。
処置が必要な場合は、抑制が必要となる場合もあります。
治療時は泣きます。
前歯を打って、歯がめり込んでしまった場合は、そのまま置いておくと生えてくることが多いので経過を診ますが、歯がめり込んだ影響で、後から生えてくる永久歯の形や色が通常通りできてこない(形成不全)が起こることがあります。
3~4歳(乳歯がそろっている時期)
遊びが活発となり、乳歯のケガが増えてきます。
乳歯が全部出てきて、乳歯の根の成長もほぼ完了している時期です。
この時期に前歯をぶつけた場合、1~2歳の頃に比べて永久歯のエナメル質への影響は少なくなりますが、成長途中の永久歯の根に影響があることがあります。
この時期は、何をされるかわからない恐怖心から、大きくあばれて処置が難しい場合が多いです。
定期検診で通院していても、この年齢では椅子に座ってなんでも診療できるのが2割~半々くらいと言われています。
それでも、検診で来ていただいているお子さんの場合、部屋に入って、お口を開けてくれる子が大半です。
初めての受診の場合、お口すら開けてもらえないということもあります。
今まで一回も歯医者さん受診したことのないお子さんは、なんでも上手に治療ができることの方が少ないです。
歯医者さんには虫歯がなくても、歯のチェック、検診で受診しておくのをお勧めします。
5~6歳(そろそろ永久歯が生えてくる準備の時期)
下前歯が少し揺れてきたり、永久歯が生え始めるお子さんが出てくる時期です。
この時期に前歯をぶつけても、後から生えてくる永久歯への影響は比較的少ない時期です。
乳歯の前歯の根の部分が永久歯との交換のために短くなってきているため、もともと揺れがあったような場合は、固定をせずに抜歯になる場合も多くなります。
もうじき抜けそうだった歯が抜けてしまったということもあります。
永久歯がどのくらいで生えてきそうかということを確認して治療していきます。
子どもの前歯をぶつけてしまったら
子どもの歯の外傷はほとんどが前歯で起こります。
まずは状態を確認しましょう。
触ると痛むことが多いので、触れる場合は、そっと触れるようにしてください。
揺れているか、歯の位置がずれていないかを確認してください。
大きく歯が欠けて痛がっている、歯の位置がずれた、めり込んだ、歯が抜けたという場合は、なるべく早く歯医者さんを受診してください。
歯の状態によって、処置の内容が変わります。
歯を戻す処置の際は、麻酔を使用することもあります。
その後食事を2時間ほど控えていただくことになりますので、そのつもりで受診してください。
歯が揺れている(振盪・亜脱臼)
それほど揺れていない場合は、経過観察となることも多いです。
かみ合わせて痛い時、ゆれが大きい場合は両隣の歯と固定します。
安静にする必要がありますので、低年齢の場合は、おしゃぶりや指しゃぶり、おもちゃを噛むことを控えて安静を心がけてください。
ある程度の年齢になった場合は、硬い食べ物を控えるようにして安静を図って下さい。
歯をぶつけた際、歯ぐきから出血がみられることがあります。
衝撃で歯の神経がダメージを受けて、後から変色してくる可能性もあります。
歯が欠けた
ちょっと歯の先が欠けた程度であれば、経過を見ていきます。
大きく歯が欠けた場合は詰め物で補修します。
歯が大きく欠けて歯の神経が出てきてしまった場合は、麻酔処置が必要となります。
歯の根が折れた
歯の根が折れているかどうかの診断は、レントゲン撮影によって行います。
しかしながら、永久歯が乳歯の根に重なって見えることも多いため、診断自体が難しいこともあります。
根が折れていても、歯のゆれが無いもしくは軽いときは経過を見ていきます。
根の先が折れていた場合は、自然に吸収されることが多いので、何かしなくてはいけないということもありません。
歯がかなり揺れてしまうほど折れているときは、歯を抜く場合があります。
歯がめりこんだ(陥入)
ぶつかって歯が歯ぐきにめり込んでしまった場合、乳歯ではほとんどの場合、自然にまた生えてくることが多いです。
永久歯に影響が出そうな場合は、歯を引っ張って元の位置に戻すこともありますし、場合によっては抜歯する場合もあります。
歯の位置がずれた
乳歯の場合、歯の根ごと歯ぐきの外に飛び出してしまうほど歯の位置がずれてしまうことがあります。その場合は、抜歯になります。
抜歯をしなくてもよさそうな程度であれば、元の位置に戻して、隣の歯と接着剤で固定します。
歯が抜けた
抜けた乳歯を戻すことは原則行いません。
無理に歯を戻すことで、あとから生えてくる永久歯に影響が出る場合もあるからです。
次の条件がそろったうえで、保護者の方の強い希望があり、処置後の管理にご協力がいただける場合のみ、元に戻すことを試みます。
1.歯が抜けてから3時間以内
2.抜けた歯が良好な状態で保存されていた場合
3.歯を戻す処置を行っても、あとから生えてくる永久歯が傷ついたりする可能性が低い
4.隣の歯でしっかり固定できる状態がある
5.場合により根の治療が必要となるが、その処置が可能である。
歯を戻してもらいたいというご希望がある場合は、歯を拾って持っていきましょう。
時間が勝負になります。一刻も早く歯医者さんを受診しましょう。
拾う時は、歯の頭の部分(歯冠)をつまんでください。
決して根の方(先が細い方)は触らないようにしてください。
水道水で洗うのもやめましょう。
幼稚園、学校で受傷した場合は、歯の保存液があるかもしれませんので、そのまま保管してもらいましょう。
また、ご家庭であれば、牛乳(低脂肪、ロングライフ牛乳除く)につけて歯医者さんを受診
しましょう。牛乳アレルギーが無いことを確認してから使用して下さい。
決してティッシュで歯をくるまないようにしましょう。
牛乳もないときは、ラップでくるんで歯を乾燥させないようにしましょう。
くるんだ後も、歯の根には負担をかけないように持ち運んでください。
※参照 スタッフブログ 永久歯をぶつけてしまったら
https://www.aobahiro-dc.com/column/2024/4240/
歯が抜けた後はどうするの?
歯が抜け落ちた場合、保隙装置といって、子供の入れ歯(小児義歯)を使って、見た目を回復します。
低年齢の場合は、処置ができるようになってから小児義歯を作ることになります。
早い子で3歳過ぎからできることもありますが、治療に耐えられるか、入れ歯を入れることができるかは個人差がありますので、通院している歯医者さんと相談してみてください。
唇が腫れてきたとき
唇に傷があると、かなり腫れてきます。
冷たい水で絞ったタオルや、ビニール袋に入れた氷水で冷やすと少し症状がよくなります。
冷えピタは内部まで冷やせないこと、傷には貼れないことから、お勧めしていません。
凍らせた保冷剤を直接当てる方もいらっしゃいますが、冷え過ぎになりますのでよくありません。タオルでくるんで使用しましょう。
だいたい1週間ほど治るのにかかりますが、日にちとともによくなってきます。
歯の変色が起きてきた
歯をぶつけてから3週くらいたった時に、あれ?歯の色が変わってきたのかな?と思うことがあるかもしれません。
歯をぶつけた衝撃で歯の神経がダメージを受けると、変色が起こってきます。
ピンク色だったり、暗い赤色だったり、少し灰色のような色になったり、歯の色が濃くなったりするなどの歯の変色が起こる可能性があります。
いつもの歯の色と違うことに気付いたら、歯医者さんを受診して下さい。
変色後8か月は色の回復が期待できますので、経過を見ていきます。
色が戻らずにだんだん変色が進んでくる場合は、根の治療が必要になります。
歯の外傷はすぐに予後がわかるものではありません。
神経の変化は受傷後1年以内に起こってきますが、その後も永久歯の生え変わりまで様子を見る必要があります。
長い期間受診が必要になることをご理解ください。
歯の外傷を予防するには
子どもの時期は、何につまずいて転ぶかわかりません。
ご家庭でする少しの工夫で、外傷を予防することができます。
机の角にぶつけても大丈夫なようにクッション材を巻き付ける、活動範囲の床にクッション性の高いものを使うというのも一つの工夫です。
つかまり立ちをするようになると、色々なところをつかんで、つかみ損ねて転ぶということが起こります。
軽い家具などは一緒に倒れることも。
つかまりそうなものはしっかりと固定しておきましょう。
色々なものを引っ張ってそれが顔にぶつかるということもあります。
手が届きそうなもので、危ないものが無いかを低い目線で確認しておきましょう。
子どもは、どんな時に何をするかわかりません。
十分対応しているはずでも、歯をぶつけることは起こります。
その時に対応できるように、対応を覚えておきましょう。
あおばヒロ歯科クリニックでは小児歯科・子供の歯の外傷も対応しています。
歯をぶつけてしまったときは、まずはお電話でご連絡ください。
※参考サイト 歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク 歯の外傷
歯の外傷 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020 (jda.or.jp)
日本外傷歯学会 歯の外傷ガイドライン
https://www.ja-dt.org/guidline.html
※参考資料 歯の外傷で小児が来院したら クインテッセンス出版株式会社