気圧が下がると歯が痛む?
2024年06月13日
梅雨の季節になりますね。
気圧が低い日が続くと、体調が良くない。
台風がくると体調が良くない。
そういう方もいらっしゃるかと思います。
ところで、歯も気圧の変化を受けて痛むことがあるとご存じでしたか?
気圧の変化で歯はどうなるの?
通常は痛みを感じていない歯なのに、気圧が下がると歯が痛むことがあります。
人間の体は、外からの気圧に対して、体の中から外への押し返す力でバランスを保っています。
低気圧のときは、外からの圧力が低くなり、体にかかる力は小さくなります。
低気圧では、体の中から外へ押し出される力が働きます。
気圧の低い場所の例としては、登山や飛行機で高度の高いところです。
気圧の低い飛行機の中では、お菓子の袋がパンパンになるのですが、これと同じようなことが体にも起こります。
体には、空洞や管が多くあります。
低気圧になると、この空洞や管が膨らみます。
膨らむと周囲にある組織、神経などをを圧迫して痛みを感じてしまうようになるのです。
歯には、「歯髄腔」という神経が入っている空間があります。
歯髄腔は通常は外の気圧と等しくなっています。
低気圧になると、体の中にある空洞や管が膨らみます。
周囲にある神経や血管が圧迫されることで痛みを感じるようになるのです。
ただし、健康な歯ではあまり起こりません。
痛みを感じるのは主に虫歯、治療中の歯です。
特に歯の神経に慢性炎症があるような場合は急な痛みが出ることがあります。
通常は痛くない状態でも、気圧の刺激を受けるため、急に痛みが出ることがあるのです。
このとき激しく歯が痛む場合は虫歯があることがほとんどです。
山登り前に歯を治した方がいいというのもこのためです。
飛行機で旅行の予定のある方は、事前に治療をしておきましょう。
歯の状態によっては、回数がかかることもありますので、予定がわかっていたら早めに受診することをお勧めします。
気圧の変化で痛みが出てきたら
もし、搭乗中にどうしても痛くなってしまったら、痛み止めを服用します。
事前に歯科医に痛み止めの処方をお願いしてもいいかもしれません。
日本航空の快適な空の旅のためにというホームページにも歯が痛む可能性について説明があります。
ひどい痛みに対して、痛み止めを準備してくださっているようです。
※参考サイト 日本航空 快適な空の旅のために 機内で発生しやすい症状とその対処法
https://www.jal.co.jp/health/before/symptoms.html
腫れてくるようであれば、濡らしたタオルで患部を冷やして痛みを緩和させるという方法もあります。
あくまでも一時的な対処ですので、気圧の変化で歯が痛んだ時は、むし歯や歯周病、歯の根の先に膿が溜まっている可能性があるため、すみやかに歯科医院を受診するようにしましょう。
気圧が下がると歯周病が悪くなる?
疲れがたまる、体の抵抗力が下がっていると、歯ぐきが腫れやすくなることはご存じですか。
抵抗力が下がると、免疫細胞の活動も落ちてしまうために、歯周病菌が悪さをすることを抑えることができなくなります。
風邪をひいたとき、疲れがたまった時に歯茎が腫れるようになるのは、このためです。
気温や気圧の変化は、体に負担を与えることになりますので、体力を消耗します。
気圧の変化などによって症状が悪化する疾患は「気象病」と言われています。
気象病は、気圧・気温・湿度など気象の大きな変化によって自律神経が乱れることが原因で起こるといわれており、頭痛やめまい、肩こり、関節痛など様々な症状が引き起こされると言われています。
気象病は、天候の変化の前後に起こることもあります。
2015年の報告ですが、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の予防歯科学分野の研究グループは、「慢性歯周炎が急性化するのは気象変化後1~3日である」ということを明らかにしました。この時間差は、歯周病菌が歯周ポケットに侵入してから増殖して炎症を起こすまでの時間だと考えられています。
メカニズムは不明だそうですが、気圧や気温の変化がホルモン分泌や循環器系に影響し、慢性歯周病が急性化した可能性が考えられるそうです。
免疫力が低下すると、歯周病が悪化するということは間違いないようです。
気圧の変化で体に症状が出る方は、気圧が下がる日は、疲れをためないように生活の工夫が必要になります。
その上で、普段よりも丁寧なブラッシングをして歯周病の悪化を防ぎましょう。
※参考サイト 岡山大学 プレリリース
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id346.html
虫歯があると宇宙飛行士になれないって本当?
さらに過酷な気圧の変化を体験するのが宇宙飛行士です。
宇宙空間で切る宇宙服の中は、0.3気圧に減圧されているそうです。
脱ぎ着するたびに気圧の変化があるので、気圧の影響を受けて歯が痛む可能性があります。
そのため、宇宙飛行士は、打ち上げの前に、外れそうな詰め物はないか、飛行中に悪化しそうな歯が無いか確認するそうです。
虫歯があっても、治療していれば問題なく、歯に詰め物があっても大丈夫。
しっかりと治療して臨むことが必要なのですね。
また、宇宙では、歯科治療ができないため、歯が痛くて苦しんだ時に歯を抜くことができるように、抜歯の訓練も受けるそうです。
最近は、宇宙旅行へ民間人でも行けるようになってきました。
これから宇宙に出るような時代が来るかもしれませんが、その時まで健康な歯を維持したいですね。
※参考サイト JAXA よくある質問 虫歯があると宇宙飛行士になれないって本当ですか
https://humans-in-space.jaxa.jp/faq/detail/000437.html
テーマパーク8020 宇宙飛行士と歯
https://www.jda.or.jp/park/knowledge/astronauts.html
天候の変化が原因で、歯が痛くなってしまう箇所は、虫歯や歯周病が悪化した箇所です。
治療が必要のない健康な歯が、気温や気圧の急激な変化によって痛みを引き起こすことは、あまりありません。
気圧の変化で痛みを感じるということは、体が「直したほうが良い箇所があるよ」いうサイン。
気候がよくなると、痛みは消えるかもしれませんが、虫歯や歯周病といった原因は消えませんので、一度治療が必要かどうか、歯医者さんに相談してみましょう。