歯周病は薬だけで治る?
2024年12月18日
薬を飲むだけで歯周病が治らないかな・・・と思いますが、そういう便利な薬はありません。
歯周病を薬で完全に治すことは残念ながら現時点で難しいとされています。
薬局では、うがい薬や歯磨き剤、軟膏など様々な歯周病に効果があるという薬が販売されていますが、一時的に症状をやわらげることはできても、根本的な歯周病を治療するものではありません。
どうして薬だけでは治らないの?
1.原因菌といわれる菌は塊になり(歯垢)、バイオフィルムという膜を作っているから
バイオフィルムは強力で、バリアの役目があります。
バリアを通過するのが大変なため、歯周病菌へ薬が到達するのは難しいのです。
バイオフィルムは、キッチンのネバネバしたぬめりと同じものですので、しっかりスポンジ等でこすらないと取れません。洗剤をかけただけではなかなかキレイにならないのと同じで、バイオフィルム歯磨きでこすり落とさないと取れないのです。
残念ながら、薬だけでバイオフィルムははがれないのです。
2.原因菌が歯周ポケットの奥深くに潜んでいるから
薬は血液に乗って体をめぐります。薬の種類にもよりますが、歯周ポケットまで到達する薬はなかなかありません。
3.歯周病はご自身の免疫力によって治癒が変わるから
免疫力が下がると色々な病気になりますが、歯周病も同じように免疫力の影響を受けます。
ご自身の免疫・抵抗力があれば、歯周病も治癒していきますが、免疫力が低下して歯周病菌の活動が活発になってしまうと治りません。また、歯周病菌に対して弱い方もいますので、同じ薬でも効果に違いが出てくる可能性があります。
個人の状態によっても変わりますので、薬だけでは治らないのです。
以上のように、様々な理由から、薬だけで歯周病を治すのは難しいのです。
そうはいっても、薬が補助的に使われることもあります。
歯周病治療にはどんなお薬が使われるの?
日本ではアジスロマイシン(ジスロマック)が一部歯周病治療で使用されています。
患者様の中には、アジスロマイシンで歯周病が治ると思われている方もいらっしゃいますが、それだけで歯周病が治るものではありません。
歯石取りといった治療と併用が基本です。
歯石取りと一緒に抗生物質を服用することで歯周病数値が改善しやすくなるという報告もあるのですが、論文によって効果に差があります。
抗生物質は、副作用も出たり、耐性菌ができてしまったりする可能性があるため、投与は慎重に検討することになります。
繰り返し服用していると、だんだん効かなくなってきてしまう可能性があるのです。
薬だけで歯周病が治るわけではありませんが、薬が全く意味がないわけではなく、腫れた等の急性症状のときには使われています。
しかし、歯周病が薬だけで治るわけではありませんので、治歯周病治療の基本となる、歯石取り、ご自身での歯磨き等のケアは必要です。
塗り薬は効果があるの?
歯ぐきが腫れたとき、歯医者さんで塗り薬を塗ることがあります。
皮膚科では薬を塗ったら良くなりますので、同様に、歯周病も薬を塗ったら治るのでは?と期待され、希望される方は多いです。
歯周ポケットに塗る抗生物質は、一時的には効果がありますが、長期的に効果が持続するものではありません。急に歯茎が腫れたり、感染症に対して弱くなっている状態の方、通常の治療を受けても改善が見られなかった場合などに使用されています。
副作用や耐性菌の危険性が少ないのですが、効果も低いものになります。
また、薬剤の種類は限られています。
歯医者さんで塗ることができるのは、日本ではテトラサイクリン系のお薬になります。
よく患者様から質問されるのですが、こちらの軟膏は市販されていません。(2024.12月現在)
市販で売られている歯ぐきへの塗り薬には抗生物質は配合されておらず、殺菌成分が入っています。CPC(塩化セチルピリジニウム)といわれるものです。
歯磨き剤・洗口剤にも配合されたりするものです。
CPCは、お口の中の浮遊性細菌に対して殺菌作用を持っていますが、バイオフィルムに対しては表面の菌にしか効果がありません。一時的に症状は消えるかもしれませんが、根本的な治療にはならないのです。
※参考サイト 歯周治療のガイドライン2022
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_2022.pdf
まとめ
歯周病の治療は、薬だけで完全に治るわけではありません。
歯科医院での治療と、日々のセルフケアを組み合わせることで、歯周病を予防し、健康な歯を保つことができます。
歯周病でお悩みの方は、早めに歯医者さんにご相談ください。